集めたら花束になるものとして 君から春の手紙が届く
あなたがもし 怪我したら駆け寄るつもり 拾って隠し持つシーグラス
隕石のかけらと言って渡されて あのラスク ずっと食べられなかった
手に載せて手は秋の雲だけになる
生まれたら人間でした 蹴とばした いろはすみかんがゴミ箱に入る
遠くても分かる 晩夏の眩しさに 全部閉まっている海の家
八月の ふたりっきりの夕暮れに つり革がいっせいに傾く
手で作る蝶をゆっくり崩すとき まぼろしの夏草が光った
花柄の皿に花置く桜桃忌
噛む檸檬わたしは夢の中にいない
海なのか どうかはずっと分からない バケツに揺れていた夏の水
ホームランバー 当たるまで食べまくる 友達がしている片思い
校庭のずれた時計はずれたまま さよならだけの春が近づく
曼珠沙華揺れて戦後が遠ざかる
帰路に就く人みな月光を背負い
ビーカーの水に 光はゆがみつつ 夏の結晶実験進む
手のひらを花器と呼ぶとき 手のひらに 冬の欠片のような風花
約束はとおく断たれて 水仙の切り花は冬の鋭さをもつ
立つための足で あなたが立っている 雪原 あなたという冬の骨
丸まった背中に骨を浮かしつつ 君が学んでいる博物誌
手の内を明かさずにいる立葵
マッキーで「夏」と書いた 親指の付け根に 夏は滲み始めて
夏へ向かう時にこころを横切った 鳥に名前を付けてください
干からびてそれからずっと鳩時計
傘の骨もろくてクリスマスツリー
可能性、って 言って花火を打ち上げる 欲しいのは光る体だったよ
特別なものに埋もれて暮らしたい ミントクレープに差し込むやえば
友達の友達が羊飼いという 君の口笛 すっとんきょうな
鳥飼ってそうと言われて そうかなあ まぼろしの鳥横切るばかり
渡されて紙は手紙に秋の星
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